高い弁護士報酬の言訳について

弁護士報酬については、需要と供給という市場原理は働いていません。どちらかと言えば、弁護士会で規定がある場合を除き弁護士側の言い値で決まってしまいます。また、一般に、商品の購入にしろフィービジネスにしろ1件単価で値段が決まるのが普通です。しかし、一部の分野で総額に対して割合で対価を支払う制度があります。不動産の仲介手数料とか弁護士報酬がそうです。最近では、司法書士の報酬も以前はほとんど案件ごとに値段が決まっていましたが、認定司法書士の業務で弁護士報酬と同じ制度を導入するようになっています。

この制度が、一般庶民からすると、「手間はほとんど変わらないのに金額によって支払う報酬が違うのか?」という素朴な疑問が生まれます。納得し難い報酬制度のために弁護士の費用は高い、という概念が生じます。最近、通常の弁護士報酬に比べて格段に安い金額で受任するとの広告やインターネットでの告知も見受けられるようになりましたが、価格破壊までは至っていません。

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ところで、弁護士報酬が高い理由として、「弁護士は極めて高度な知識を提供するサービスである」という主張がなされていますが、果たして、「極めて高度な知識を提供するサービス」が他のどんな職業よりも優遇されるべき理由になるのか、他の職業はそんなに重要ではないのか、という疑問が生まれます。そもそも、弁護士の全ての業務が「極めて高度な知識を提供するサービス」と言えるのかも疑問が有ります。

厳寒の海で漁をする漁師や八十八の手間を加え、土・日の休みさえ無く野良仕事をして美味しいお米を提供してくれるお百姓さんや修練によってマイクロメーターで測れない1ミクロンの厚さを素手の感覚で測ることが出来る熟練工より優遇されるべき仕事なのでしょうか。二勤一休や一日10時間以上の労働を強いられている救急病院の医師・看護師よりも社会的に重要な職業なのでしょうか。さらに、東日本大震災における医業に携わる人々の活躍に比べて弁護士の存在感は如何ほどのものかと疑問に感じることもあります。むしろ生産性の低い仕事で、人の不幸の上に成り立っている仕事とは言えないのでしょうか?もちろん、場合によっては、トラブルに伴う苦しみを取り除いたりしてくれているかもしれませんが・・・

さらに、経済的利益の根拠として、1,000万円の請求に対して700万円は支払うという紛争相手方の意思表示が予めあった場合は、300万円を「経済的利益」と算定できないかとの疑問もあります。(一部の弁護士においては、既にそのような計算をしている弁護士もいらっしゃるようですが極めて少数派の様です。)

この考え方に対して、「訴訟になれば、当初の和解の意思は無くなるのが普通であるから和解提示額は無かったも同然である。」との主張をされる弁護士がいらっしゃいますが、果たしてそうでしょうか?中には、「話を裁判所に持ち込むんだったら、この話は無かったことにしてくれ。」とていうこともあり得るかもしれませんが、第一回口頭弁論からいきなり、「今まで何回も700万円までなら払うけれども、それ以上は払えないから700万円にしてくれ、とお願いしました。700万円で和解させてください。」と和解勧告を求めるケースだってあるわけです。これだと、当初の和解の意思は無くなる、ということにはならないでしょう。


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やはり高い弁護士報酬金

別章で、日弁連の「弁護士の報酬に関する規定の二条に「弁護士の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なもので無ければならない。」と定めていると説明いたしました。

この規定からして明らかに高すぎる弁護士報酬の例を示したいと思います。最近、弁護士事務所の中には、この分野に特化して業務を行っているところが有るくらい位、いま最も美味しい分野です。すなわち、それは過払い金回収業務です。

この分野は、敢えて弁護士で無くても90%は自分で回収することが出来ます。手順としては、まず文書・電話で取引履歴の開示を請求します。そうすると1〜3週間で開示資料が送られてきます。貸金業者によっては、すでに過払い金に対する損害金利率を0%で引き直し計算をして送ってくれます。その引き直し計算書の内訳に間違いがないかチェックをした後、無料の引き直し計算ソフトを使って過払い金の損害金利率を5%で計算しなおします。算出した過払い金に損害金を明記して20〜30日後を期限として過払い金の請求をします。すると、ほとんど期日前に電話が掛かってきます。

ここからが各社の対応ですが、銀行系クレジットカード会社の場合は、いきなり支払い意思を表示することも有りますが、1〜2割の減額で和解出来るなら2回程度の交渉で合意出来ます。信販会社・旧大手消費者金融会社(現銀行傘下の消費者金融会社)の場合は過払い金の額にも寄りますが、2割程度の減額なら同じく2回程度の交渉で合意になります。

独立系消費者金融専業業者は、和解金額を3〜5%程度で提示してきたり、あらゆる法解釈を主張してきますので、素人が任意交渉で解決するのは難しいようです。それ以外の貸金業者は、交渉で合意すれば、貸金業者から和解契約書が送付されてきますので署名・捺印して返却すれば1〜3ヵ月後に指定口座に振込になります。

これを弁護士に依頼したとして、銀行系クレジットカード会社、信販系クレジット会社及び旧大手消費者金融会社は、1〜2回程度の交渉で解決することになります。受任通知を出したり、利息制限法所定利率での引き直し計算をしたり、過払い金の返還請求を行ったりするのが、そんなに手間の掛かる業務とは思えません。

上記規定の「時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なもので無ければならない」という内容からすると、もっとも一般的な報酬金20%は極めて高い報酬だと言わざるを得ません。20%の報酬対象となるのは、「消滅時効」を主張したり、「みなし弁済」や「悪意の受益者の否定」を主張をしたり、請求金額の3%での和解を主張してくる独立系消費者金融専業業者だけでしょう。

過払い金の返還請求を行う依頼者は、どちらかと言うと経済的弱者だと思われますので、「傷口に塩を塗る」様な弁護士報酬を請求するのではなく、出来る限りの配慮をお願いしたいものです。また、債務整理で1件当たり51,500円で総額50万円超支払った方と話をしたことが有りますが、しかも、その費用を捻出するのに新たに消費者金融会社から30万円を借入した、という内容に詐害行為を勧めているのではないか、とさえ思ったものです。
弁護士ではありませんが、司法書士の先生に、「詐害行為になりませんか?」と話をしたところ、「債権者(貸金業者)としては、そう判断するでしょうね」と半ば認めていました。


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